皆さんこんにちは!つばさぬです。
私事ではありますが、最近大学を卒業し社会人デビューを果たしました。時間の制限もあり、これまでのようにはいかないかもしれませんが、ブログも同人活動も少しづつでも続けていけたらなと思います。
はじめに
さて、弊ブログや同人誌を通じて、これまでTDSのフォートレス・エクスプロレーションについてあれやこれやと語ってきましたが、すぐ目の前にありながら、特段触れてこなかったものがあります。
そう、「フライングマシーン」です。

要塞へと続く橋を渡り、門をくぐるとまず眼前に見えてくるのが、かのレオナルド・ダ・ヴィンチにインスパイアされたこの飛行機ですよね。
このフライングマシーンの特筆すべき点はなんといっても、要塞の中でもまるっきり存在そのものがリニューアルされた点です。
フォートレスで行われている謎解きプログラム「ザ・レオナルドチャレンジ」の誕生前後で要塞自体のリニューアルはされていますが、それでもそれは施設内のプロップスの配置が変わったり、追加されたりといったものでした。
その点、フライングマシーンは明確に新旧でそのものが変わっており、説明書きまで変わっている点で特筆すべきと言えるでしょう。
初期型(オープン〜2020年7月頃)
新旧フライングマシーンについて決まった呼び方は特にないので、ここでは古い方を「初期型」とします。その方がかっこいいからです。
そんな初期型はTDSの開園時からコロナ禍の2020年7月頃まで存在していたと思われます。
こちらは、左右に羽ばたき式の羽と後ろにプロペラのような機構を備えている所謂「オーニソプター」で、前後2人で背中合わせになり操縦するタイプのものでした。

ホテルミラコスタの客室フロアでは、その飛んでいる姿を見ることができます。お馴染みミッキーとミニーが搭乗していますね。

このフライングマシーンの見た目は明らかにレオナルド・ダ・ヴィンチがスケッチしたものを土台にしており、それは現地で書かれていた文言からも明らかです。

現地の碑文には、以下のように書かれています。

(英語の部分が撮れてなくてすみません......)
長年の間、はばたき飛行機はレオナルド・ダ・ヴィンチのノートの中にしか存在しない乗り物だった。
しかし、我々S.E.A.のメンバーは、これまで夢に過ぎなかったこの乗り物を現実のものとしようとしている。
それほど遠くない将来、このようなフライングマシーンが、ヨーロッパの大都市上空を飛行するようになるだろう。For many years the Ornithopter existed only in the notebooks of Leonardo da Vinci. We here at the Sociely of Explorers and Adventurers have undertaken to transiorm this heretofore dream and make it a reality. We believe that in the very near future Flying Machines such as this one will be soaring high above the great cities of Europe.
レオナルド・ダ・ヴィンチ自身もS.E.A.会員である以上、ここでいう「我々S.E.A.のメンバー」がいつの時代の会員のことを指しているのかは議論の余地がありそうですが、少なくともレオナルドの羽ばたき機がフライングマシーンの基となっているのは間違いなさそうです。
面白いのは、ここで "soaring" という単語が使われているところ、そう「ソアリン」です。
もちろん、この文章が示す「それほど遠くない将来(in the very near future)」とは近現代のことなのでしょうが、今となってはソアリンの伏線のように見えるのが面白いですね。
レオナルド・ダ・ヴィンチと飛行機について詳しくは後述します。
消失と変貌
そんなフライングマシーンでしたが、コロナ禍でパークの入場が制限されていた2020年の7月を境に、その存在が突如として消えてしまいます。
そしてレオナルドチャレンジもリフレスコスもやってないからほぼ無人のフォートレス、でもマゼランズはラウンジ以外やってた pic.twitter.com/EXSvZARkGa
— なつめ (@paxpisces) 2020年7月1日
その事実には、多くのファンが嘆き悲しみ、そして苦しんでいました。
ザ・レオナルドチャレンジにて部屋の準備を待つ間にキャストさんといろいろお話ししたんだが、地図の種類が減ったことに触れると「フライングマシーンが戻ってきたらチャレンジしてみてくださいね」と。
— カルン (@Karun_CBR) 2022年9月7日
もう暫く希望を捨てずに帰りを待っていようと思う。既に2年以上いないままなのだけれども!! pic.twitter.com/BvqtOjSRU8
そして、突然の消失から3年が経過した2023年の6月末、なんと全く新しい姿でフライングマシーンが帰還したのです。
— 鶏チキン (@Niwatori2525) 2023年6月30日
正直、フォートレス・エクスプロレーションなどという、ゲストの入園者数にほとんど影響を及ぼしていないだろうアトラクションに、(特に昨今の)運営が追加投資をするなんて考えにくいので、当時は驚いたことをよく覚えています。
戻ってきたことは喜ばしい反面、かつての姿に馴染みのあったファンにとってはやるせない部分もあったでしょう。
新型(2023年6月末〜現在)
では、そんな新型のフライングマシーンを見ていきましょう。
新型フライングマシーンの特徴はなんといっても鳥のような見た目です。

左右の羽は羽ばたき式ではなくなりましたが、前方には鳥の顔のような意匠が付き、後輪の骨組みは生物の骨格のように曲がった形をしています。
さらに、後部には鳥の尾羽のような羽もついており、マシーン全体で鳥のようなシルエットをしていることがわかるでしょう。

こちらの新型が、2019年7月にオープンしたお隣のアトラクション「ソアリン:ファンタスティック・フライト」を意識していることは間違いないでしょう。
このマシーンの「顔」がソアリンに登場するハヤブサのアレッタに似ているということは当時話題になりましたね。


アレッタに見られる「ウジャトの眼」を踏襲しているように見える。
フライングマシーンのモデルチェンジに伴って、現地の文言も変わっており、その内容を読むとソアリンを意識していることがはっきりしてきます。

太古の昔から人々は鳥を見ては、なぜ人間は空を飛べないのだろうと考えていた。
人類の卓越した能力のひとつは、自らの無力さをインスピレーションとモチベーションの源とすることであり、このフライングマシーンはその一例を示している。
我々S.E.A.はこのような発想や発明を重んじ、好奇心と創造力と勇気をもって人類の進歩に向けて尽力している。From ancient times, flying birds made people wonder why they couldn't do the same. One beautiful ability of humanity is to use inability as a source of inspiration and motivation, of which this flying machine is an example. We here Society of Explorers and Adventurers treasure these inventions and are commited to advancing humanity with curiosity, ingenuity, and bravery.
フライングマシーンが主体だった以前の文言に比べ、空を飛ぶということを通じて、より普遍的な人類の営みそのものに焦点が向けられているものになっていることがわかりますね。
「インスピレーションとモチベーション」、「好奇心と創造力と勇気」といったワードは、空飛ぶことを夢見て「ドリームフライヤー」を発明したソアリンのカメリア・ファルコを想起させます。
そもそも、ソアリンに登場するドリームフライヤー自体、フライングマシーンを少なからず踏まえたような見た目になっていますよね。

なぜ初期のフライングマシーンが変更されたのかという理由は定かではないものの、少なくともこのように新型のフライングマシーンはかなりソアリンを意識して作られているのです。
また、この変更に伴い、フォートレス・エクスプロレーション内で配られているペーパーにも変更が加えられました。
マップ内のフライングマシーンの絵と、その説明が一新されているのがわかると思います。



書かれた文言は、両者ともフライングマシーンの前に書いてあったものを簡略化したものであることがわかりますね。
レオナルドと二つのフライングマシーン
さて、これまで見てきてわかるように、初期型フライングマシーンではあったレオナルド・ダ・ヴィンチの名前は新型では消えてしまっています。
では、レオナルド・ダ・ヴィンチは、フライングマシーンの文脈から完全に抜け落ちてなかったものにされてしまったのかというと、実はそうであるとも言えないのです。
新旧二つのフライングマシーンの比較をしていくと、ある面白いことに気が付きます。
そもそも、初期のフライングマシーンは具体的にどのようなものを基にしていたのでしょうか。それをフォートレス内の一室「エクスプローラーズ・ホール」で見ることができます。

人類も鳥のように空を飛ぶことができる、彼の生きた時代にはありえなかったその発想を基に、レオナルドは翼を羽ばたかせて飛ぶ飛行機を考案したのでした。
これらは1480年代後半に執筆されたパリ手稿Bに残っているとされています。
こちらのプロペラエンジ......飛行機は形こそフライングマシーンとは異なりますが、ペダルを踏むことで羽を羽ばたかせるタイプだったと言います。

かつてのフライングマシーンも、これと同じようにゲストがペダルを漕ぐことで、羽が羽ばたく仕組みになっていたのです。
TDS フォートレス・エクスプロレーション
— ダン・アンドロイド (@Dan_Android_st) 2023年8月18日
フライングマシーン ※2001年当時#TDS #TDR_history pic.twitter.com/5hZf2StBFw
しかし1505年頃になって、レオナルドは、鳥が羽ばたかずに空中で停止しているときのことに着目します。
彼は鳥類の飛び方を熱心に研究し、それは現在も『鳥の飛翔に関する手稿』に残されています。
レオナルドは飛行機に関して、以下のように記したとされています。
鳥は数学的法則に従って作動する機械であるから、人間はそのすべての動作を再現するような機械をつくることができる。ただしこの機械には、鳥と同じように羽ばたいて飛ぶ能力はなく、せいぜいバランスを取る能力があるだけだ。したがって、人間のつくったこの機械に欠けているのは、鳥の霊魂だけであるから、それは人間の霊魂で代用する必要がある。(アトランティコ手稿 434r)
斎藤泰弘(2019)『誰も知らないレオナルド・ダ・ヴィンチ(NHK出版新書)』NHK出版 楽天Kobo版
このように、レオナルドは以前のように羽ばたいて飛ぶための翼ではなく、鷲や鳶のように滑空するための翼を構想したというのです。
奇しくもこのことは、新型のフライングマシーンにも当てはまっていることがわかります。

このフライングマシーンは初期型のように翼が羽ばたく機構が付いておらず、完全に固定されているのです。つまり、新型フライングマシーンは、滑空することを目的として設計されているのかもしれません。
さらに興味深いことに、レオナルドはイタリア語の "ucello"(「鳥」の意)という言葉を、鳥と彼の製作する飛行機の両方に使っていたとされています。もはや彼の中では鳥と人工の飛行機とが同じ概念で表されるものだったのですね。
このように、レオナルド・ダ・ヴィンチの構想した飛行機の変化は、偶然か必然か、フライングマシーンの変化にも当てはまっているのです。
受け継がれる”夢”
ここで、私たちはもう一つあることを見落としていたことを認めなければなりません。それは先ほど提示した初期型フライングマシーンの説明が書かれたペーパーです。
この文言に注目してみると、ここに書かれた日本語の説明と、その基となったであろう英語とで書かれていることがかなり違っているのです。

Dreams put on paper lead to innovative new ideas - like human-powered flight. Climb aboard the Flying Machine and experience this dream for yourself.
紙の上に描かれた夢は、人の力をもって空を飛ぶような、革新的な新しいアイデアを生み出す。フライングマシーンに乗って、その夢を君自身で体感してみたまえ。(拙訳)
先程の現地の文章とは受ける印象が異なるのがわかると思います。
ここで強調されているのは、なんといっても「夢(dream)」というワード。
そうです。レオナルドのノートに書かれた「夢」は、ただの夢に過ぎなかったのではなく、それこそが発明を生み出す源だったのです。
そしてフライングマシーンは、その当初から、そんな夢を体感するためのものだったということがわかります。
「夢」というワードは、TDRが「夢の国」と呼ばれるように、ディズニーと切っても切り離せないものですが、中でもディズニーシーのソアリンとの結び付きが強い言葉です。
先日惜しまれながらも、更新を停止してしまったTDR公式ブログでは、ソアリンの舞台について、以下のように述べられています。
ここは、アトラクション「ソアリン:ファンタスティック・フライト」の舞台、ファンタスティック・フライト・ミュージアム。
1815年にオープンした、空を飛ぶという人類の永遠の夢に捧げられた特別な博物館です。初代の館長は、博物館の創設者であるカメリアの父親、チェッリーノ・ファルコです。
つまりメタ的な次元では、このアトラクション自体が「人類の夢」に捧げられたものとも解釈できます。
また、ソアリン出口のイタリア語で書かれたメッセージにも、「夢(sogno)」という言葉が登場しています。
Il nostro impegno costante è quello di realizzare un mondo bello in cui portare i propri sogni a nuove altezze.
Our constant commitment is to create a beautiful world where you can take your dreams to new heights.(筆者による英訳)
「夢をさらなる高みへと導く(take your dreams to new heights)」と、なんともソアリンらしい素敵なメッセージですよね。
さらに、カメリア・ファルコが発明した「ドリームフライヤー」は、名前からしてもろに「夢」の要素が入っています。

これまでで、新型のフライングマシーンがソアリンを意識していることを述べてきました。
しかし、これを見るに「夢」をテーマの一つとして掲げるソアリンというアトラクションは、初期のフライングマシーンの系譜にあったことがわかります。
初期のフライングマシーンが持っていた「夢を自分自身で体感する(experience this dream yourself)」というある種のコンセプトは、ソアリンのオープンをもってして、再び形になったと言えるのではないでしょうか。
終わりに
さて、ここまで見てきたように飛行機の発明に尽力を尽くしたレオナルド・ダ・ヴィンチでしたが、羽ばたき式にせよ滑空式にせよ、最終的に彼の飛行機が大空を舞うことは叶いませんでした。
もっと言えばソアリンにおいて、カメリア・ファルコの発明したドリームフライヤーが実際に空を飛んだという記録も特に残っていませんよね。
月並みな表現になりますが、フライングマシーンやソアリンが大事にしているのは、夢の実現云々ではなく、あくまで「夢」そのものなのではないでしょうか。

まさに夢のような光景である。
確かに、レオナルド・ダ・ヴィンチもカメリア・ファルコも、実際に飛行機を飛ばすことはできなかったかもしれません。
しかし彼らは、夢に向かって絶え間ない探究をし続け、そしてその夢をそれぞれのやり方で形にしてきたのです。
そこに、ゲストの「夢を見る力とイマジネーション」という最後のひと押しが加わることで、ドリームフライヤーは世界中の空を飛び回ることができたといってもいいのではないでしょうか。
皆さんも、フォートレス・エクスプロレーションでフライングマシーンを訪れた後にソアリンを体験して、その夢を羽ばたかせましょう。
ということで、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは!
参考文献
斎藤泰弘(2019)『誰も知らないレオナルド・ダ・ヴィンチ(NHK出版新書)』NHK出版 楽天Kobo版
Johannes Nathan, Frank Zöllner. Leonardo. The Complete Drawings (Bibliotheca Universalis). TASCHEN, 2014



