舞浜海洋国家

ほぼフォートレス・エクスプロレーションのファンブログ

「天井ワニ」は占星術におけるドラゴンか?

皆さんこんにちは!つばさぬです。

前回投稿した記事ですが、自分の思った以上に反響があり正直驚いております。いつも弊ブログを見てくださっている皆さん、本当にありがとうございます。

あんなことを言ったからには、自分も今一度気を引き締めなければ......という思いです。

そんなわけで、今回のテーマはみんな大好きな「ワニ」についてです。

国立科学博物館で企画展「ワニ」をやっていたことでも話題ですよね。筆者も先日行ってきました。

 

アルケミーラボラトリーの「ワニ」

「ワニ」とはいっても、やはりいつもの通りディズニーシーのフォートレスの話から入っていくのですが、その中の一室「アルケミーラボラトリー」の天井からワニの剥製が吊り下げられているのはご存じでしょうか。

アルケミーラボラトリーの天井に吊り下げられたワニ

このワニについては、以前合同誌に寄稿した際にも記述しています。

このワニが果たして何なのか、という自分の見解は後に述べるとして、このような天井から吊り下げられたワニ、通称「天井ワニ」について、とある説があります。

企画展「ワニ」において展示された「天井ワニ」風のワニ。実際には、天井から吊り下げられているわけではなく、透明な天板の上にワニが載っている

それが、このようなワニが占星術において、ドラゴンを象徴したものであるという説です。

度々囁かれている説なので、耳にしたことがある人もいるかもしれません。

ただこの説、個人的にはあまりしっくりきていません。

何も、なんとなく気に食わないから、という理由で支持しないわけではなく、公的な文献や学術書に同様のことが書いてあるのを見たことがないのです。

正直、自分自身図像学や占星術に関しては門外漢なので、自分が見つけられていないだけなのでは......?とも思っていました。

なので、前々から怪しいとは思いつつも特に触れていなかったのですが、先日界隈の仲間内の方から、「天井ワニ」の話についてどう思うか?というお声がけをいただき、改めてしっかりと追究していくことに。

ドラゴンとワニ?

そもそも、この「天井ワニ」の説が流布することになったのには、明確な発端があると考えられます。それが2022年のこちらの一連のツイート(ポスト)。

要約すると大体こんなことが書いてあります。

  • 占星術では月の軌道が地球の公転面と交わる二点を「ドラゴンズヘッド」「ドラゴンズテイル」と呼ぶ。これを表すのが天井ワニではないか。
  • 天井ワニは薬局でも見られるが、これは医学と占星術が分離していなかったことの名残か
  • 19世紀に入ると、その意味を知る人もいなくなり、魔術師などを書く際のお約束となっていった。
  • 20世紀にはその意味も完全に失われ、その「お約束」ですら形骸化していった。

つまり、占星術における「ドラゴン」をワニの剥製によって視覚化したのがその起源だということですね。

これは確かに説得力があるように思える内容であり、この方の持つ情報量や影響力も考慮すると、ある程度信憑性は高いように感じられます。

「ドラゴンヘッド」「ドラゴンテイル」(一般的に日本語では所有を表す「ズ」を入れないことに留意)という概念は占星術に存在しているので、そこは間違ってはいないといえるでしょう。

遅くとも16世紀にはこの概念は定着していたようで、ペトルス・アピアヌスによる1540年のAstronomicum Caesareum(『皇帝天文学』)に、アストロラーベに重ねられたドラゴンが描かれています。

『皇帝天文学』(1540)内の図像。この書はフォートレスでもお馴染みの神聖ローマ皇帝カール5世に捧げられたものだった。ドラゴンの頭と尾の先が、黄道と白道(月の通り道)との交点に位置している。
File:Astronomicum Caesareum. 1540 (149346693).jpg - Wikimedia Commons

この言葉がどのように成立したのか?という話は以下のtoroia様の記事でかなり詳細に書かれているので、気になった方はご覧になってみてください。

toroia.hatenadiary.jp

 

しかし、上述のツイート以前に天井から吊るされたワニを占星術と直接関連付ける議論はあまり見られず、日本語以外で軽く調べてみても同様の内容はヒットしないことに注意が必要です。
(当然私の調べが甘いだけで、以前から言われていた話だという可能性も十分にありますが。)

もちろん、主張している人の多い少ないは、その正しさとは全く関係ありませんが、ツイートをされたご本人様も「推測されます。」とあくまでも一個人の意見として主張されていることがわかります。

いやいや、上記のツイートの画像にあるように、しっかりと証拠が残っているではないか、そう思った方もいるでしょう。

確かに、上記のツイート内の画像は非常にもっともらしいように見えます。

ですが、問題はこの一連のツイートの中で、主張の根拠たるこの画像の出典が明らかにされていないことです。

 

風刺された占星術

そもそも、天井ワニが占星術に関連するもののように描かれている図像は上記のツイートで示されていたもの以外に出てきません。(調べた限りは)

ということでまずは、この図像に描かれている要素をしっかり見ていきましょう。調べたところ、いつもお世話になっている Wikimedia Commons で見つけることができました。

占星術師を描いたと思われる絵
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/91/The_English_dance_of_death%2C_from_the_designs_of_Thomas_Rowlandson%3B_%28IA_englishdanceofde00comb%29.pdf

占星術師と思われる男性が椅子から転げ落ちるように描かれており、その後ろには骸骨、倒れかけている机の上にある地球儀のようなものの上には黒い猫、そして仰天する女性たち。

この描かれ方からして、真面目な占星術の図像ではないということが読み取れます。

さらに、例の天井ワニの箇所に注目すると、その背景に描かれている図は明らかに太陽が中心の近代的なものになっています。

「天井ワニ」の部分を拡大したもの

ドラゴンヘッド、ドラゴンテイルとはすなわち太陽の黄道と白道(月の通り道)の交点のことです。つまり、例え見かけ上でも太陽が地球の周りを運動しているという前提に立って初めて成立するものです。

であるとするのなら、太陽が中心で静止しているこの図と、それに重ねられたワニが、ドラゴンヘッド、テイルを表しているとは考えにくいでしょう。

はっきり言ってめちゃくちゃです。

それもそのはず、この画像の出典は調べたところ、19世紀にイギリスで描かれた風刺画なのです。

下記にリンクを添付した、米エモリー大学図書館のアーカイブによれば、図像のタイトルは "The Fortune Teller"(直訳すると「占い師」)

出典となる本のタイトルは The English dance of death : from the designs of Thomas Rowlandson, with metrical illustrations, by the author of "Doctor Syntax." となっています。

dia.pitts.emory.edu

この本に関する日本語文献は以下リンクを参照いただければと思います。

bunka.repo.nii.ac.jp

通称『英国の死の舞踏あるいは生と死の舞踏』とされるこの本は、1815〜1816年にかけて出版されたもので、イギリスの文学者ウィリアム・クーム(1741〜1823)が書いたもの、収録されている絵は風刺画家のトマス・ローランドソン(1756〜1827)によって描かれたものだそうですね。

その内容は当時の大英帝国を揶揄するものであり、そもそも占星術や魔術の本などでは決してないのです。

先程のツイートをした方は、2022年のものと同様の内容を2016年にツイートしていますが、こちらでは画像の出典と風刺画であることが明らかにされています。
(そして恐らくこれが、天井ワニと占星術を結び付けた最初の投稿)

しかし2022年のツイートでは、出典を明らかにしていない為、この画像のみが独り歩きしてしまったのでしょう。

問題なのは、偶然か必然か、図像の下部にある文字の部分が切れた状態で画像が出回ってしまっていることです。

というのも、ここに書いてあることを読みさえすれば、これが風刺画であることは火を見るより明らかだからなんですね。

図像の下部にあるキャプション

All Fates he vow'd to him were known.
And yet He could not tell his own.

は、他人の運命なら全て知っていると豪語した。
しかし、それでもなお彼自身の行く末だけは見通すことができなかった。
(筆者による意訳)

これは明らかに占星術師に対する皮肉です。彼の行く末とは当然、死のことでしょう。

さらに本文には以下のような記述があります。

The subtle Knave was well array'd
In all the Costume in his Trade,
With sable Gown, and Cap well furr'd,
The potent Wand, and flowing Beard.
Above an Alligator hung,
Beneath a range of Orbs was strung ;
While, on a Globe, to aid the cheat,
Grimalkin occupied a seat ;
For the unconscious mewing beast
Was thought to be a Witch at least.

この狡猾なならず者は
商売道具一式を身につけ、
毛皮のコートと帽子に身を包み、
効力のありそうな杖と流れるような顎髭を蓄えていた。
上にはワニが吊るされ、
下には球体がずらりと並び、さらに詐欺師を助けるために、地球儀の上にはグリマルキン(猫)が陣取っていた。
というのも、無邪気に鳴くだけのその獣は、少なくとも魔女だと思われていたからだ。
194頁, 拙訳)

 

ここでは、詐欺師たる占い師の身につけている衣服や部屋に置かれた装飾が、客を騙すためのそれっぽいものでしかないことが述べられています。

つまり、ここに描かれたワニは、決して何か意味があるものでもなければ、ましてや占星術的な象徴でもありません。

この図像の天井ワニは、いかにも意味ありげで胡散臭い商売道具の1つでしかないのです。

件の2022年のツイートでは、19世紀以降に天井ワニが形骸化したということが述べられていましたが、最初に示されていたこの図像こそが、その19世紀に描かれたものであり、事もあろうに占星術それ自体を揶揄しているものなのです。

さて、とは言ってみたものの、これはあくまで、"この図像に関して言えば"、天井ワニ=ドラゴン説の根拠にはなり得ないことを示したにすぎません。

当然、これ以外に説の根拠となる図像や文献が見つかった際には話は変わってきます。

少なくとも明確な根拠が示されていない現時点では、可能性の一つとして、過度に信じすぎることも、切り捨てることもしない立場でいるべきでしょう。

 

"Apothecary Alligator"(薬局のワニ)

では、このような「天井ワニ」の図像は他にどのようなものに見られるのでしょうか。

先程提示した2022年のツイートでは、

  • 薬局に天井ワニが見られること
  • 天井にワニを描くのがお約束であったこと

が述べられていました。

実際、調べてみるとこのようなワニは "Apothecary Alligator"(薬局のワニ)という「お約束」として知られていることがわかります。

現在においても、薬局や教会において天井にワニが吊り下げられているものを見ることができます。

以下のサイト"TV Tropes"は、創作物における「お約束」をまとめている有名なものです。この中の Apothecary Alligator というページに、魔法使い、錬金術師、薬師の部屋に天井から吊り下げられたワニがモチーフとして描写されていた例がまとめられています。

tvtropes.org

 

さらに以下のサイトでも、天井から吊り下げられたワニが描かれているイメージがまとめられているのを見ることができます。

brer-powerofbabel.blogspot.com

しかしいずれの場合も、天井ワニについて、神秘的なもの、エキゾチックなもの、風変わりなもの、というような記述はあっても、占星術のドラゴンヘッド、ドラゴンテイルと関連づけたものは見つけられません。

確かに、当時において医術や錬金術と占星術は明確に結びついたものであり、その境界は曖昧なものでした。

だからといって薬局や錬金術師の部屋に吊り下げられたワニが、明確に占星術的な意味を持っていたという証拠にはなりえないのです。

 

「驚異」としてのワニ

では、結局のところ天井から吊り下げられたワニの正体は何なのでしょうか。

残念ながら、調べた範囲ではこのようなワニ自体に具体的にどのような意味があるのか、という決定的な正解はわかりませんでした。

しかし、ワニ自体の意味は判明しなくとも、そもそもこのような「お約束」の発祥がどこにあるのかを突き止めることは可能でしょう。

筆者はルネサンス期の蒐集文化であった「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」に見られるような、「驚異」や「珍奇」の対象としてワニを位置づけたことがその始まりであったと考えています。

ヴンダーカンマーと東京ディズニーシーのフォートレス・エクスプロレーションとの関連については、以下の記事で述べています。

mkaiyoh.jp

文学史家の小宮氏は、ヴンダーカンマーについて述べた自身の著書の冒頭で以下のように述べています。

 ワニの剥製、天球儀、椰子の実、時計、珊瑚細工、楽器、甲冑、ロザリオ、ガラス細工、絵画、貝殻......。なんの脈絡もなさそうに見えるこれらの品々は、ある一つのキーワードで結ばれている。いったい何だろう?
 答えは「ヴンダーカンマー」だ。

小宮正安(2007)『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』集英社新書ヴィジュアル版 9頁

 

このことからも、これらの蒐集室の代表的な蒐集品として、ワニの剥製があったことがわかりますね。

ヴンダーカンマーを代表する有名な図像が、ナポリのフェランテ・インペラートによる『自然誌』(1599)に描かれたものです。

『自然誌』に描かれた「驚異の部屋」
部屋の天井の中央にワニが張り付けられている。
File:RitrattoMuseoFerranteImperato.jpg - Wikimedia Commons

こちらの図像には、その名の通り驚異的なものとして、様々な生物やその剥製が部屋中に展示されている様子が描かれています。その中でも、天井に張り付けられた大きなワニが一際目立っているのがわかりますね。

後期ルネサンスの奇人アタナシウス・キルヒャー(1602〜1680)は、まさに人間ヴンダーカンマーとも呼ぶべき人物で、実際ローマに「キルヒャー博物館」と呼ばれることになるヴンダーカンマーを築いたことで知られています。

彼の書簡に残されたやりとりには、自身の蒐集品としてワニを入手したことが残されており、キルヒャー博物館を描いた図像には確かに天井から吊り下げられたワニが描かれているのです。

キルヒャー博物館を描いた『バベルの塔』(1679)の挿絵。左端に天井から吊り下げられているワニが確認できる。
File:Kircher-Museum im Collegium Romanum.jpg - Wikimedia Commons

以下のサイト "WONDERS OF NATURE AND ARTIFICE" では、爬虫類の中で最も大きく、異国情緒に溢れ、謎めいた起源や習性を持つワニが、ルネサンス期にいかに人気であったかが説明されています。

wonder-cabinet.sites.gettysburg.edu

これに加え、当時高価であっただろうワニの剥製を持っているということは、自身の権威を示すものだったのかもしれません。

さらに、こちらのサイト”Idols of the Cave”(良い名前)では、天井から吊り下げられたワニの剥製について、ヴンダーカンマーに始まり、薬局、教会、アラブ諸国のワニと様々な例がまとめられています。

idolsofthecave.com

ここでは2002年に行われた米スミソニアン博物館の展示 "Wounder Bound: Rare Books on Early Museums" の「ヴンダーカンマー」のセクションのタイトルが "Crocodiles on the Ceiling"(文字通り「天井のワニ」の意)であったことが述べられています。

天井のワニがヴンダーカンマーの代名詞として使われていたことから、いかにそれらが密接に結びついていたのかがわかるでしょう。

ヴンダーカンマーはただ珍奇なものを並べたわけではなく、そこは新プラトン主義やヘルメス主義、カバラといったルネサンス期に興った魔術的な思想が支配する空間でもありました。

このようなヴンダーカンマーのイメージが、魔術師や錬金術師の図像に影響し、そういったものとともに天井から吊り下げられたワニが描かれるようになったのかもしれませんね。

 

「見せる」ということ

もう一点、どうもこのような天井に吊り下げられたワニは、それ自体の含む意味というよりかは、「見せる」ということそのものが重要だったようなのです。

博物館学者である丸山雄生氏(2018)の以下の論文では、前近代において動物の剥製が怪物的であったり、畸形的であったり、なんらかの異常性を帯びていたことが指摘されています。

www.jstage.jst.go.jp

丸山氏は、イタリアのポンテ・ノッサの教会に吊るされた16世紀頃のワニについても触れており、その理由として、巡礼者への見世物としての役割に加え、邪悪な怪物と結び付けられたワニの剥製を見せることで、悪を打ち払う神の力を誇示する狙いがあったと推測しています。

イタリアのポンテ・ノッサ教会に吊り下げられたワニの剥製
Fichier:Ponte Nossa Coccodrillo Chiesa SM Annunziata.JPG — Wikipédia

ここにおいて、ワニが聖書でドラゴンや大ヘビなど邪悪な怪物と結び付けられていたことが天井ワニに関連付けられていますが、占星術におけるドラゴンヘッド、テイルには特に触れられていません。

なお、ワニがキリスト教的に倒すべき対象であるということは、東京ディズニーシー内の「パラッツォ・カナル」にある聖テオドーロの図像からも読み取ることができますよね。

「パラッツォ・カナル」で見られる聖テオドーロとワニ。ヴェネツィアのサン・マルコ広場でオリジナルの像を見ることができる。

そしてやはり、そういった珍奇なものを見せる一環として、「驚異の部屋」や「キュリオシティのキャビネット(Cabinet of Curiosity)」にワニが吊るされていたことが、丸山氏によって指摘されています。

都内のヴンダーカンマーと名高い「インターメディアテク」にはワニが壁に張り付いている。

さらに、建築学者・思想史家の桑木野幸司氏(2011)の以下の論文では、初期近代イタリアの植物園において、天井の梁からワニやサメの巨大標本が吊り下げられていたことが述べられています。

ir.library.osaka-u.ac.jp

これについて桑木野氏は、「同時代の芸術=驚異蒐集室(クンスト・ウント・ヴンダーカンマー)に通じる空間演出がなされていたことがわかる。」としています。同氏の別の著書では、以下のようにも書かれています。

当時流行したヴンダーカンマーと呼ばれる蒐集室は、天井や梁の目立つ位置に、巨大な爬虫類や哺乳類の骨格標本を吊るして、訪問者の度肝を抜くディスプレイが好んで採用されていた。

桑木野幸司(2022)『ルネサンス 情報革命の時代』ちくま新書 65頁

天井にひときわ巨大な生物のはく製や骨格標本を吊り下げるのは、部屋に入った者に驚異の感覚を呼び起こすねらいがあった。

同上 228頁

これらのことから、当時、何かを蒐集し展示する空間において、天井からワニを吊り下げるという「見せる」行為が空間演出の一環として機能していたことがわかります。

そしてやはり、それは前述の「驚異」とも関連しています。当時の知識人たちはこのようなイメージを共有していたのでしょう。

当時の薬局にワニが吊り下げられていたことも、こうした空間演出の意図があったと推測することができますね。

結論と留保

以上のことを踏まえると、天井に吊り下げられたワニについて、以下のような経過をたどったということが推測できます。

①16世紀の教会で、邪悪な怪物に結びつけられたワニが見世物として吊り下げられる。

②同時代のヴンダーカンマーで、奇怪なもの、珍奇なものとして、様々な動物の剥製が展示され、その筆頭が天井に吊り下げられたワニであった。

③当時様々な生物を蒐集した薬局においても、ヴンダーカンマーのような空間演出がなされ、天井からワニが吊り下げられた。

④怪しげなものや不可思議なものが並べられた空間や魔術的な空間には、天井からワニが吊り下げられているというパブリックイメージが誕生。

⑤様々な珍品が並べられた魔術師、錬金術師、占星術師などの部屋には、当然天井にワニが吊り下げられているというお約束が形成され、現在までそれが続いている。

番号を振ってはいますが、①~③に関しては、初期近代における複合的なイメージがあったと考えられるので、実際にはどれが起源であるかを特定するのは難しいと思います。

ここまで見てきたように、「天井ワニ」に重要な要素は「驚異」や「珍奇」、そしてそれを「見せる」ということでした。「なぜ天井からワニが吊り下げられていたのか?」という疑問に対する私なりの答えは以上になります。

そしてもし、これが天井ワニの持つ意味であるとするならば、不思議でどこか怪しいものを見せるイメージとして描写される天井ワニは、その本来的な意味を現在に至るまで失ってはいないのではないでしょうか。

記事の冒頭で示したアルケミーラボラトリーの天井ワニも、現在までその系譜が脈々と受け継がれていることを示すものなのかもしれません。

いずれにせよ、巷で囁かれているような占星術における「ドラゴンヘッド」「ドラゴンテイル」と「天井ワニ」とは関係ない、少なくともそのような証拠は見つかっていない、というのが今回の私の結論です。

とはいえ、何度も述べていることですが、これはあくまでも私が調べた範囲で証拠が見つかっていないということにすぎません。

特に、占星術に関する文献は今回ほとんど参照できていないので、探せば見つかる可能性も十分にあります。

何か情報をお持ちの方や、発見された方がいっらしゃれば、教えていただけると助かります。

 

終わりに

最後になりますが、この記事は、学者でも研究者でもなんでもない一般の素人が書いたものにすぎません。

ここで書いた内容はすべて筆者個人の推測、憶測に基づくものであり、結局はインターネットの海に流された無数の情報の一つでしかないことは強調しておきます。

それでもなお、この記事を読んで少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。

ご意見、ご感想、批判などあれば、是非コメント等いただければと思います。

ここまで読んでいただいた皆さん、ありがとうございました🙇‍♂️

それでは!